シリーズ企画「招へい研究者に聞く!!」

シリーズ企画 「招へい研究者に聞く!!」京都大学 梶原隆史先生

京都次世代エネルギーシステム創造戦略では、最先端の研究者を国の内外問わず招へいし、研究開発を進めています。
シリーズ「招へい研究者に聞く!!」では、担当コーディネータ(CD)が研究室を訪問し、招へい研究者の先生方に研究内容、近況などをお伺いします。


第6回京都大学 物質-細胞統合システム拠点 梶原隆史先生
今回ご紹介するのは、二酸化炭素と水からメタノールを合成する人工光合成の研究のなかで、多孔性配位高分子(PCP)を用いた光触媒の研究にチャレンジされている京都大学 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS) 特定研究員 梶原隆史先生です。(担当コーディネータの大西がインタビューしました。)

CD:まず、経歴をご紹介ください。
梶原先生:出身は神戸市で、京都大学理学部・同大学院理学研究科を卒業しました。学部時代は吉田キャンパス、大学院時代は宇治キャンパスで過ごしました。のちに住友化学在職中には桂キャンパスに出入りしていましたし、現在は京都市成長産業創造センター(ACT Kyoto)にて研究を行っておりますので、京都が研究者としての故郷のように思っております。大学院の頃はACT Kyotoから自転車で数分のところに住んでおりましたので、非常に懐かしくもあり、ここで研究させていただけることを大変ありがたく思っています。

CD:研究テーマの人工光合成では、PCPが、キーとなる材料になっています。PCPに興味をもたれたきっかけについて説明してください。
梶原先生:学部では超分子化学、大学院では典型元素化学と少し異なりますが、いずれも有機化学をベースにした基礎研究でした。卒業後、いくつかの大学で研究を行ううちに、典型元素から遷移元素へ、有機化学から高分子化学・無機化学へ、基礎研究から応用も志向した研究へ、と研究領域を拡げていく中で、金属と有機配位子の組み合わせからなるPCPと出会い、現在に至ります。

CD:企業の研究を経験されましたが、その経緯や以降の研究で役に立ったことについてお聞かせください。
梶原先生:ちょうどこの頃にPCPの分野に参画しました。国立研究法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトで北川進・北川宏両教授と共同研究させていただき、主にPCPの触媒としての応用について研究しました。スクリーニングのために文献既知のPCPを多種類合成したことや、新規PCPを創製するための有機配位子の設計・合成からPCP合成・機能評価までを一貫して行うことができたのは現在の研究にも非常に役立っております。また、性能だけでなく長期安定性やコスト面までも含めて評価を行うことが重要であることを学びました。

CD:このプロジェクトでの研究テーマについてご説明ください。また、このテーマは今までの経験とどの様に関わっていますか?
梶原先生:
CO2の化学変換により有用物質を作ることは、CO2排出量の削減や石油に頼らないエネルギーシステムの構築という観点から極めて重要な課題です。iCeMS所属の招へい研究者として全体で「人工光合成」を目指しておりますが、私はその中で優れた光触媒として機能するPCPの創製を担当しております。触媒というと均一系(分子)触媒と不均一系(固体)触媒とがあってそれぞれに一長一短ありますが、PCPは両方の長所を併せ持った材料であると考えています。つまり、バルクで見れば固体ですが、ナノスケールまで拡大して見た時にはそこには分子が規則正しく並んでいるので均一系・溶液の化学が適用できるのではないかということです。上述のように有機化学をバックグラウンドに持ち研究を行ってきておりますので、PCPの構成要素である金属と有機配位子のうち特に後者に由来する機能に強く興味を持って研究を進めているところです。

地域イノベーション戦略支援プログラムでご講演中の上田先生
第一回成果報告会(2015年3月19日)で研究成果を発表

CD:具体的には、どの様な成果がでていますでしょうか?
梶原先生:現在は、PCPの有機配位子の部分に還元反応を触媒する金属錯体を修飾して、CO2の還元によりCOガスとギ酸、プロトンの還元により水素ガスが生成することまでを確認できており、研究結果を国際学術誌Angewandte Chemieに投稿し受理されました。実用上は、工場から排出されるCO2ガスをそのまま用いる事が必要になりますが、通常、排出ガス中のCO2濃度は、5〜10%の低濃度です。今回の研究成果は、5%の低濃度のCO2でも溶液中のPCP内に取り込まれ、還元反応が起こるという事を世界で最初に示したことになります。

CD:非常に興味深い成果が得られていますね。今のご研究について、将来どのように発展させていきたいとお考えですか?
梶原先生:先ほども述べました通り、CO2からCO、ギ酸の合成に成功しましたが、光エネルギーの利用効率や、触媒回転数、生成物選択性などまだまだ改善すべき点はたくさんあります。また、本プロジェクトでは、最終的にCO2フリーのメタノールの合成を目指しています。メタノールは化成品の原材料として最もよく使われており、またエネルギー密度も高いため、液体燃料としても有望であると考えています。CO、ギ酸等は二電子反応により合成されますが、メタノールは六電子反応のため、更にPCPに高度な触媒機能を付加していく必要があります。これらの目標を達成するには、他のテーマとの融合によりiCeMS全体で「人工光合成」を達成できるよう連携を進めていくことも今後の重要な課題です。

CD:研究者として、将来目指されていることがあればお聞かせください。
梶原先生:PCPの一番の特長はやはり設計性の高さだと思います。周期表にある数十種類の金属と、合成さえできれば無限種類の有機配位子とを組み合わせることで文字通り無限の可能性が生まれます。また、複数種類の金属や有機配位子が混ざり合った複合材料も作ることができますから、例えばCO2捕捉・濃縮機能、光捕集機能、CO2還元機能、などを全て兼ね備えた材料ができれば、まさに植物のように空気中の希薄なCO2を取り込んで変換することができるようになるかもしれません。このような複数の機能を併せ持つ材料を、特に有機配位子の部分の設計にこだわって作っていきたいと考えています。

地域イノベーション戦略支援プログラムでご講演中の上田先生
X線回折装置にて新しく合成したPCPの構造を解析

CD休日はどのように過ごされていますか?趣味などお持ちでしたら是非聞かせてください。
梶原先生:
家で引きこもっていることが多いと思いますが、スポーツ観戦に出かけることがあります。野球、バレーボール、バスケットボール等の色々なスポーツを観戦します。とりわけ、3月は大相撲の大阪場所の観戦を楽しみにしています。あとは自転車で走り回るぐらいでしょうか。

CD:学生時代、何かクラブ活動とかサークル活動をされていましたか?
梶原先生:高校まで野球部、大学では軽音サークルでドラムを演奏していましたが、今はどちらも観戦・鑑賞するだけです。

CD:地域イノベーション戦略支援プログラムでは、産学連携によるイノベーションの創出を目指しています。最後に、企業の皆様方に対して何かメッセージがあればお聞かせください。
梶原
先生:材料を作って触媒活性を高めて、というだけならば大学だけでもできると思いますが、見かけの数字だけでなくて、本当に使えるものにするためには企業様のお力が必要になりますので、興味を持たれている企業様があればお話しさせていただきたいと考えています。とは言っても、私は普段は研究室に篭っていてなかなか企業の方と直接お会いする機会がありませんから、コーディネータさんのお力添えをぜひともお願いしたいと思います。

CD:ありがとうございました。

梶原先生の研究内容についてはこちら(PDF1MB)もご覧ください。

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