シリーズ企画「招へい研究者に聞く!!」

シリーズ企画 「招へい研究者に聞く!!」京都大学 小松徳太郎先生

京都次世代エネルギーシステム創造戦略では、最先端の研究者を国の内外問わず招へいし、研究開発を進めています。
シリーズ「招へい研究者に聞く!!」では、担当コーディネータ(CD)が研究室を訪問し、招へい研究者の先生方に研究内容、近況などをお伺いします。



第2回 京都大学理学研究科化学専攻 特定研究員 小松徳太郎先生
小松徳太郎先生は25年度から27年度まで、招へい研究者として活躍いただきました。28年4月日本大学医学部一般教育学系化学分野准教授として赴任され、招へい研究者には後任のWANG先生が着任されていますが、小松先生には引続き地域イノベーションにご協力いただいています。

今回ご紹介するのは、「革新的触媒を目指したPCP/ナノ合金複合体の開発」のご担当で“元素間融合”により革新的な材料を開発するというテーマにチャレンジされている 京都大学理学研究科 特定研究員の小松徳太郎先生です。(担当コーディネータ(CD)の小林が先生にインタビューしました。)

CD:まず、経歴をご紹介ください。
小松先生:学生時代は、京都大学理学研究科で有機超伝導体を研究していました。
酸化物超伝導体と同じような成り立ちで超伝導が発現する材料を初めて見つけて博士号をとり、東大の総合文化研究科に移って5年余り助手をしていました。2001年から昨年まで、日立化成(株)で計算化学による樹脂材料設計に携わっていました。

CD:グループリーダーの北川宏先生の後輩にあたられるということですが、当時の印象的なエピソードはありますか?
小松先生:私が研究室に配属された時、北川先生は博士課程2年目に在籍していらっしゃいました。
助手はもとより教授とも遠慮なく議論され、しばしば論破していらっしゃって、非常に感銘を受けました。
「こんなことをしても良いのか!」と思いました。科学の場では偉い先生も一学生も平等であることを、身を以て示して頂いたと思います。

CD:北川宏先生といいますと、現代の錬金術とも云われる“元素間融合” がなんといっても有名ですが、小松先生ご自身は“元素間融合”にどのような可能性を感じておられますか?
小松先生:「電子状態をチューニングして目的に合わせた人工元素を得る」という発想自体は古くからありまして、学生時代に研究していた有機導電体の分野でも、構成分子の分子軌道を原子の軌道になぞらえて、「人工原子」と呼ばれることがありました。また、15年くらい前の「コラプシウム」というSFには、元素の組み合わせを変えて望みの材料を瞬時に得る技術が出てきます。
話がそれますが、作者のウィル・マッカーシーは本気でこの技術を実現しようとして、ベンチャー企業を興しています。今は太陽電池材料を開発しているそうです。
こんな風に、後付けの説明や夢物語は多いのですが、北川先生が提唱していらっしゃる”元素間融合”の場合、ターゲットを定めて狙い通り実現されている所が、すごいな、と思います。
アルカリ金属やアルカリ土類金属、放射性物質や有害な元素を除いても、利用可能な金属元素は50種近くあります。単純に2種類選んでも1,000通り近い組み合わせがあり、3種類以上では爆発的に増えます。そう考えると、北川先生が開いた扉の向こうには、ほとんど手つかずの豊穣な大地が広がっていると言えます。

CD:“元素間融合”というと非常に基礎的なサイエンス と思いますが、これを実際の革新的な材料の開発に結び付けていくためには、どのようなことが重要になってくるでしょうか?
小松先生:中途半端な「基礎研究のようなもの」にとどまらず、「なぜその性質がでるのか」を突き詰めることが、大事なのではないかと思います。また、組み合わせを広げ、状態密度(DOS)エンジニアリングなどの理論的背景に対してマッピングすることも大切だと思います。傾向から外れたものに、革新的な材料への突破口が潜んでいると思います。

CD:なるほど・・・たまたま出来たということではなく、ターゲットを定めて作るということですね。
ものづくりと理論計算の両面からのアプローチが必要になってきますね。小松先生は理論計算にも強いとお聞きしていますが。
小松先生:元々、理論計算を専門にしていたわけではないので、「強い」と言えるか分かりませんが・・・。材料を扱ってきた経験がありますから、現実をうまく切り取ったモデルを作ったり、材料を扱う人にわかりやすい言葉で結果を伝えられるところは強みではないかと思っています。
平成26年度はフィンランドでの合成金属に関する国際会議(ICSM2014)に参加し、縮環芳香族炭化水素をモデルとして、有機分子が電子をどれくらい受け取りやすいか、あるいは出しやすいかが、分子の形の特徴で整理できることを発表しました。また、平成27年春の日本化学会では、電子を受け渡しやすい配位高分子を作るにはどのようにすれば良いか、という設計指針を発表しました。

CD:企業経験、企業から産学連携に参画された経験についてもう少し教えてください。
小松先生:2002年から2007年まで、京都大学と日立グループ、三菱化学(株)、パイオニア(株)、ローム(株)、NTTグループとの包括的産学連携アライアンスに参加して、フレキシブル・ユビキタス端末用の発光有機トランジスタの材料と光学設計、フレキシブル基板用材料の開発に協力しました。また、日立化成(株)と山形大学の包括共同研究では、高熱伝導性エポキシ樹脂の設計手法開発に携わって、ハイブリッド車などの半導体素子に使われる、放熱性に優れた樹脂材料に適用しました。
製品の不良が出た場合の原因や劣化の仕組みをはっきりさせるために、計算化学を使って協力することもありました。ほとんど研究所勤務でしたが、現場の切羽詰まった空気はそれなりに理解できると思います。

CD:担当コーディネータとしてなんとも頼もしい限りです。
ところで、頼もしいといえば、がっちりした体つきをされていますが、何かスポーツはしていたのですか?
小松先生:中学、高校と水泳部に所属して、平泳ぎを専門にしていました。大学から柔道を始めましたが、「七大ルール」という特殊なルールでやっていましたので、相手を投げる技はほとんど身につきませんでした。ですから、実用面ではあまり「頼もしい」とは言えませんね(笑)。

CD:それは、いわゆる柔道とはまたちがったものでしょうか?
小松先生:戦前に行われていた「高専柔道大会」の流れを汲むそうです。オリンピックなどで行われている柔道では、寝技になって10秒くらいすると立ってやり直しになりますし、少し動きが止まるとすぐ中断され、場外に出ても止められますが、七大ルールではどれもありません。団体戦で確実に勝つために、理詰めで勝負が決まる寝技が自然と重視されるようになったそうで、総合格闘技やブラジリアン柔術に近い柔道です。北大柔道部の同学年にいた増田俊也さんが、2年くらい前に「七帝柔道記」という自伝的小説を書いて、少し話題になっていました。

CD:では、最後に今後の抱負についてお聞かせください。
小松先生:化学が期待されている課題は、医療、資源、環境汚染、温暖化、食料などいろいろありますが、特に稀少元素を使わずにすむ材料や、エネルギーを作り出したり蓄えたりする材料の設計・開発に取り組みたいと考えています。私はこれまで、計算ツールの自作や、計算で材料設計をするなど、計算結果に基づいて有機導電体や遷移金属錯体や樹脂材料などを開発したり、作った材料を評価して設計指針へフィードバックしたりしてきました。これからは、自分で成果を上げることはもちろんですが、理論から材料設計、合成と評価まで一気通貫で行える次代の研究者を育てていきたいと思います。

CD:ありがとうございました。

小松先生の研究内容についてはこちら(PDF 644KB)もご覧ください。

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