シリーズ企画「招へい研究者に聞く!!」

シリーズ企画 「招へい研究者に聞く!!」京都大学 細野暢彦先生

京都次世代エネルギーシステム創造戦略では、最先端の研究者を国の内外問わず招へいし、研究開発を進めています。
シリーズ「招へい研究者に聞く!!」では、担当コーディネータ(CD)が研究室を訪問し、招へい研究者の先生方に研究内容、近況などをお伺いします。



第5回京都大学 物質-細胞統合システム拠点 特定助教 細野暢彦先生
今回ご紹介するのは、「拡散・透過性に優れた二酸化炭素分離・精製材料の開発」のご担当で、副生ガス等から高効率で二酸化炭素を回収する新たな材料の研究にチャレンジされている京都大学 物質-細胞統合システム拠点 特定助教 細野暢彦先生です。(担当コーディネータの日比野がインタビューしました。)

CD:まず、経歴をご紹介ください。
細野先生:東京は国分寺市出身で、修士課程まで東京農工大学で学びました。その後、博士過程から東京大学大学院へ編入し2011年に学位を取得しました。学位取得後すぐにオランダに留学し、工科大学で博士研究員として約2年半、研究(&ビール)に没頭していました。2014年1月から招へい研究者として京都大学に着任しました。

CD:大学時代のご専門は?
細野先生:専門は高分子・超分子化学です。博士過程までの研究では、「分子レベルの現象(例えば光で起こる分子の変形)を如何にして巨視的なサイズまで伝搬・増幅させるか」という命題に取り組んでいました。有機合成手法や分析機器が進歩して、様々な高機能分子を合成できるようになっていますが、その分子の性能が我々の目に見える大きさを持った材料にまで効率良く伝搬・拡大/増幅されないと意味がありません。この産業的にもとても重要な課題に対して、「分子の大面積配向手法の開発」というアプローチで取り組んでいました。分子の向きを揃えることで、その1分子の機能を最大限に引き出す画期的な手法を開発しました。

CD:オランダではどちらで研究されていましたか? それは、どんなところですか?oranda
細野先生:オランダのアイントホーフェンという町の工科大学で博士研究員として2年半暮らしていました。ベルギーとの国境に近い、オランダでは5番目に大きい町です。暮らしや雰囲気はとても牧歌的で、大学内は野ウサギがたくさんいましたし、自転車で10分行けば牧場というところなのですが、一方で電気製品で有名なPhilips本社などもあり、エレクトロニクス産業が盛んな町でもありました。大学でもロボティクスや機械工学が強く、エンジニアの町というイメージも強い町でした。とてもいいところで、またいつか住みたい場所です。

CD:そこでの生活で何かエピソードがあったら教えてください。
細野先生:初めの一年間は学生アパートのようなところに住んでいたのですが、その時の生活は今でも強烈に覚えています。日本ではまず起こらないようなトラブルが頻発し、ここで海外暮らしの洗礼を受けました。お湯が出ないトラブルが多かったですね。とにかくボイラーがすぐ壊れる。挙句に夜中に水が噴き出して漏水する。真冬に暖房(建物全体を暖める集中暖房)が止まり凍える。雨漏りする。などなど。ただ、そんな毎日でも今考えれば楽しく過ごしていました。何かトラブルがあるごとに、英語で修理屋に電話して来てもらい、それを繰り返すうちに度胸がつきました。オランダでできた友人にもかなり助けてもらいました。最後にはもうなんでも来いという状態になっていましたね。

jikkenCD:このプロジェクトでの研究テーマについて説明ください。また、このテーマは今までの経験とはどのように関わっていますか?
細野先生:深刻な環境・エネルギー問題の解決の糸口を見つけるべく、世界中の科学者がしのぎを削って研究を急いでいる課題に「ガスの分離技術」があります。現在でも大型プラントでは加熱/冷却、加圧/減圧といった大型のガス分離設備が稼働している一方で、エネルギーをオンサイト(自家)で生み出す技術も進歩してきて、より一般的で日常的な利用を想定した普及型ガス分離システムが必要とされてきています。私のプロジェクトでは、特定のガス(例えば二酸化炭素)を選択的に吸着する材料として多孔性配位高分子(PCP)と呼ばれる化合物に着目して研究しています。もう少し具体的いうと、私が専門としてこれまで培ってきた高分子材料化学とPCP化学を融合させて、簡単かつ高効率にガスが分離できる新素材の開発をしています。

CD:多孔性配位高分子というのはどのような可能性を秘めているのでしょうか?
細野先生:多孔性配位高分子(PCP)は、有機化合物の配位子と金属イオンがジャングルジムのように格子を組んで成り立っている物質です。その格子の隙間の非常に小さい空間にガス分子を吸着させることができるため、活性炭やゼオライトなどに次ぐ次世代のガス吸収材料として注目を浴びている素材です。PCPの強みは、何と言ってもそのデザイン性です。有機配位子の構造や金属イオンの種類を変えることで、自在に格子の構造やガス分子への相互作用を変えることができるため、自分の欲しい機能を持ったPCPをデザインできるという点があります。現在では世界中で研究され、多種多様なPCPが生み出されています。例えばガスを吸収するだけでなく、別の物質へと変換できるPCPが近い将来開発されるかもしれません。もし、二酸化炭素を吸収して、一気にアルコールに変換できるPCPができたら、もう石油を掘らなくても良くなるかもしれません。これはすごいですよね。絶大な可能性を秘めているわけです。

CD:PCPの未来がとても楽しみです。細野先生はこのPCPと高分子化学を組み合わせて、新しい素材の開発をされているということですが、どのようなものになるのでしょうか?
細野先生:PCPは万能のように見えますが、まだ解決が必要な問題もありますし、実際に利用する場合を想定した改良が必要な部分もあります。例えば、PCPはいわばザラメ(砂糖)のような結晶状なので、どうしても使いにくい場面があります。そこで、PCPをなんとかしてフィルム状にできないかという研究をしています。もしPCPが薄くてペラペラの膜状にできたら、そこにガスを透過させて分離ができるでしょう。これを使うと、今までとても大型だったガス分離装置が、とてもコンパクトになるかもしれないのです。

CD:なるほど。いずれそのPCPフィルムが普及する時が来るかもしれませんね。
細野先生:はい。その日を夢見て邁進しております。

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CD:日々、研究に没頭されているようですが、細野先生は学生時代もそのように常に勉強や研究に勤しんでいたのでしょうか?
細野先生:大学学部生の頃は部活が楽しくて、勉強したことより部活の記憶の方が残っていますね。学部4年間はクラシックギターとテコンドー部を掛け持ちしていました。月火木金と土曜の午前中はテコンドー、水曜と土曜の夜はクラシックギターでした。今考えても目の回る忙しさでしたね。研究室に配属されてからは実験が面白くて、昼夜問わず没頭していたと思います。

CD:休日はどのように過ごされていますか? 趣味などお持ちでしたら是非聞かせてください。
細野先生:車でドライブや買出しが多いでしょうか。あとは家で映画を見たりですね。クラシックギターは今でも練習しています。そういえば最近電子ピアノを買いました。こちらも時々練習しています。

CD:最後にひとことかふたことありましたらお聞かせください。
細野先生:そうですね。私たちみたいな化学者は毎日実験室で白衣を着てフラスコを持って、怪しい液体を煮込んだりしているわけです。ただ、やっぱりこれだけでは世界中の人の暮らしを楽にするような本当のイノベーションは起こせないと思います。大学でのマニアックな技術を世に普及・浸透させるには、やはり製造や市場価値について話し合える企業との連携が欠かせません。その点はコーディネーターの方々の力をお借りしたいと思っています。今後もどうぞよろしくお願いいたします。

CD:
ありがとうございました。

細野先生の研究内容についてはこちら(PDF2.2MB)もご覧ください。

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